アブレーションのエクササイズ

AVNRTのEPS(電気生理学的検査)を覚えるエクササイズだ!

さあ、今日もエクササイズの時間だ!

今日のエクササイズはAVNRTのEPS(電気生理学的検査)だぞ!

 

AVNRT? EPS?という人のために簡単に説明するとAVNRTとは房室結節リエントリー性頻拍の略語で房室結節付近に存在するリエントリー回路が原因で起こる頻拍のことだ。

 

AVNRTの治療はアブレーションによって行われるがアブレーションを開始する前にEPS(電気生理学的検査)を行い頻拍回路を特定する必要があるぞ!

 

というのも、一度アブレーションで焼灼した回路は二度と復元することが出来ない。

だから頻拍回路を特定することで主訴の不整脈が100%AVNRTであると言い切る必要があるんだ!

 

AVNRTのEPSは、AVNRTを治療するにあたり非常に重要なステップとなる。

このエクササイズを通してAVNRTのEPS(電気生理学的検査)を理解するんだぞ!

 

 

これがAVNRTのEPS(電気生理学的検査)を覚えるエクササイズの全貌だ!↓↓

AVNRTのEPS手順

正常洞調律中のRVエキストラペーシング

正常洞調律中のRVオーバードライブペーシング

正常洞調律中のRAエキストラペーシング

正常洞調律中のRAオーバードライブペーシング

⑤頻拍の誘発

頻拍中の心内心電図波形の確認

頻拍中のPVCスキャン

頻拍中のRVオーバードライブペーシング

 

EPSの各ステップの着眼点とそこから言えること

①正常洞調律中のRVエキストラペーシング

着眼点 そこから言えること
室房伝導(VA conduction)がある 心室から心房に電位が伝わる回路がある
減衰伝導がある 心室の電位が房室結節を通って心房に伝わっている
ジャンプアップ現象がある スローパスウェイが存在する

 

②正常洞調律中のRVオーバードライブペーシング

着眼点 そこから言えること
室房伝導(VA conduction)がある ①で行ったRVエキストラペーシングにより房室結節がダメージを受けていない
ウェンケバッハ現象が起こるレートを確認する ウェンケバッハ現象が主訴の不整脈よりも低いレートで起こった場合、Vからの刺激で頻拍を誘発しにくいと言える。
逆に主訴の不整脈よりも高いレートで起こった場合、Vからの刺激でも頻拍を誘発できる。

 

③正常洞調律中のRAエキストラペーシング

着眼点 そこから言えること
ジャンプアップ現象がある スローパスウェイが存在する

 

④正常洞調律中のRAオーバードライブペーシング

着眼点 そこから言えること
ウェンケバッハ現象が起こるレートを確認する ウェンケバッハ現象が主訴の不整脈よりも低いレートで起こった場合、Aからの刺激で頻拍を誘発しにくいと言える。
逆に主訴の不整脈よりも高いレートで起こった場合、Aからの刺激でも頻拍を誘発しやすい。

 

⑤頻拍の誘発

RAもしくはRVからエキストラペーシングを行って頻拍を誘発します。

その際、頻拍が誘発されやすいように『ISP(イソプロ)』

という薬剤を使用することがあります。

 

⑥頻拍中の心内心電図波形を確認する

着眼点 そこから言えること
His電極カテ上のA波とV波の間隔 A-V間隔が狭くなればcommon AVNRTである可能性が高い。
逆にA-V間隔が洞調律時と変化ない場合はuncommon AVNRTもしくはAVNRTではない可能性が高い。
CS電極カテ上のA波とV波の間隔 A-V間隔が狭くなればcommon AVNRTである可能性が高い。
逆にA-V間隔が洞調律時と変化ない場合はuncommon AVNRTもしくはAVNRTではない可能性が高い。

 

⑦頻拍中のPVCスキャン

着眼点 そこから言えること
リセット現象がない ケント束が存在しない可能性があり、主訴の不整脈がAVRTである可能性が低くなる。
(つまり、主訴の不整脈はAVNRTかATである可能性が高い)

 

⑧頻拍中のRVオーバードライブ

着眼点 そこから言えること
オーバードライブ直後のCS電極カテ上で、A波V波のシーケンスがA→A→Vという順である ケント束が存在しない可能性があり、主訴の不整脈がAVRTである可能性が低くなる。
(つまり、主訴の不整脈はAVNRTかATである可能性が高い)

 

AVNRTのEPS(電気生理学的検査)を整理していくぞ!

 

AVNRTのEPS手順について

AVNRTの確定診断を行う際、EPSを行っていくが

そのEPSの手順は病院や執刀するドクターの考え方によって若干異なる。

しかし、順序が変わっても要点は変わらないので臨機応変に対応しよう。

 

ちなみに最もオーソドックスなEPS手順は以下のとおりだ。

正常洞調律中のRVエキストラペーシング

正常洞調律中のRVオーバードライブペーシング

正常洞調律中のRAエキストラペーシング

正常洞調律中のRAオーバードライブペーシング

⑤頻拍の誘発

頻拍中の心内心電図波形の確認

頻拍中のPVCスキャン

頻拍中のRVオーバードライブペーシング

 

EPSの大きな流れとして

正常洞調律中のEPSでは

ジャンプアップ現象を確認してスローパスウェイがあることを証明して

頻拍中のEPSでケント束がないことを確認するんだ。

 

『スローパスウェイがあり + ケント束がない = AVNRTである』

この方程式でAVNRTの確定診断を下すぞ!

 

EPSの各ステップの詳細な解説

EPS(電気生理学的検査)では

心房及び心室から複数のペーシングパターンで

心臓を刺激することで

心臓内にどんな伝導回路があるかを特定していくんだ。

 

一つのペーシングで疾患を断定することは出来ず

様々な角度から心内心電図を検討し、疾患を総合的に判断するため

慣れてくると推理みたいでとても面白いぞ!

 

ではEPSの各ステップを詳細に解説していくぞ!

 

正常洞調律中のRVエキストラペーシング

正常洞調律中のRVエキストラペーシングでは

最初に室房伝導(V-A conduction)の有無を確認し、

室房伝導があることを確認したら、

次に房室結節、ケント束のどちらの伝導路で電位が伝わっているかを確認するぞ!

 

⇒心カテ用語辞典:エキストラペーシング, 室房伝導路(V-A conduction)

 

image室房伝導があるかどうかは

RVエキストラペーシングで最後の一発を入れた直後、

Hisカテ上に逆伝導してきたA波を見ると分かるぞ!

もしHisカテ上に逆伝導A波が確認できれば

室房伝導があると判断できるんだ!

 

 

 

 

 

 

image室房伝導が確認できたら次は減衰伝導を見ていく。

もし、室房伝導が房室結節を通って起こっていたら

必ず減衰伝導が起こる。

減衰伝導が起こっているかどうかは

RVエキストラペーシングの最後の1発の間隔を

徐々に短く(390ms. 380ms. 370ms……)していったときに

室房伝導時間が徐々に伸びれば

減衰伝導があると判断できるぞ!

⇒心カテ用語辞典:減衰伝導とは

 

室房伝導があり、減衰伝導も確認できたら

いよいよジャンプアップ現象とシーケンス変化から

スローパスウェイの存在を証明していくぞ!

 

房室結節を通る室房伝導が

スローパスウェイを通ると

ジャンプアップ現象とシーケンス変化が同時に起こる。

 

下の挿絵を例に説明すると

ジャンプアップ前は最早A波がHisカテ上に100msの間隔で観測できたのに対し

ジャンプアップ後は最早A波がCSカテ上に150ms以上の間隔で観測されている。

 

100ms⇒150ms以上の変化がジャンプアップ現象で

His⇒CSの変化がシーケンス変化だ!

 

この2つを同時に観測できたら

房室結節付近にスローパスウェイがあると証明できるので

AVNRTのアブレーションを適応する根拠となるぞ!

⇒心カテ用語辞典:ジャンプアップ現象とは

image

 

正常洞調律中のRVオーバードライブペーシング

正常洞調律中のRVオーバードライブでは

まず、先ほどのRVエキストラペーシングで房室結節にダメージがないか確認し

その後、ウェンケバッハ現象が起こるレートを確認することで

心室から不整脈を誘発できるかどうか検討するぞ!

⇒心カテ用語辞典:オーバードライブペーシングとは

 

判断の仕方は以下の2ステップだ。

①室房伝導があることを確認

②ウェンケバッハ現象がいくつのレートで起こるかを確認

 

詳しく見ていこう。image

まず、①RVオーバードライブペーシングで

室房伝導があるかどうか確認する。

室房伝導の確認方法は先ほどと同じだ。

室房伝導がある場合、

Hisカテ上に逆伝導したA波が確認できる。

 

こうして室房伝導が確認できれば

先ほどのRVエキストラペーシングで

房室結節がダメージを受けていないことが言えるぞ!

 

次に、オーバードライブの周期を

徐々に短く(150ppm, 160ppm, 170ppm, 180ppm……)していき

ウェンケバッハ現象がどのレートで起こるか確認するんだ。

imageウェンケバッハ現象が起これば

最早A波の間隔が徐々に伸び始める。

もし、主訴の不整脈が180ppmmだったとして

160ppmでウェンケバッハ現象が起きたら

心室からの電気刺激で不整脈を誘発するのは困難だろう!

逆に、主訴の不整脈が180ppmだったとして

190ppmでウェンケバッハ現象が起きたら

心室からの電気刺激で不整脈を誘発することは十分に可能だ!

 

正常洞調律中のRAエキストラペーシング

正常洞調律中のRAエキストラペーシングでは

房室結節近傍にある2重伝導路を証明するため

ジャンプアップ現象を確認してスローパスウェイの存在を証明していくぞ!

 

RAエキストラペーシングでのジャンプアップは

Hisカテ上のHis波に着目するんだ。

 

下の挿絵を例に説明すると、

エキストラペーシング最後の1発からHis波までの時間が

ジャンプアップ前は270msに対し

ジャンプアップ後は420msと

伝導時間が50ms以上大幅に伸びている。

これは明らかに異なる性質の伝導路を通っている証明となり

ファーストパスウェイとスローパスウェイからなる

2重伝導路が存在する証拠となる。

 

さらに、ジャンプアップ後の心内電位では

HisカテとCSカテ上で、V波の前にA波が観測されている。

このA波はスローパスウェイを順行し、

ファーストパスウェイを逆行してきた『逆行性A波』であり

2重伝導路の存在を証明するさらなる証拠となる。

image

さらにジャンプアップ後に観測される逆行性A波の数から

ジャンプアップ後、2重伝導路を何回リエントリーしたかがわかるぞ!

ジャンプアップ後に逆行性A波が

1回観測させると「ワンエコー

2回観測されると「ツーエコー

3回観測されると「スリーエコー

と言われ、エコーの回数だけ2重伝導路をリエントリーしているんだ。

 

アブレーションの適応になるのは

2重伝導路をツーエコー以上回ったときだけだぞ!

 

以上、RAエキストラペーシングでは

「ジャンプアップ現象あり + ジャンプアップ後の逆行性A波 = スローパスウェイあり」

この方程式でスローパスウェイを証明していく。

この流れをしっかりと理解しておくんだ!

 

正常洞調律中のRAオーバードライブペーシング

正常洞調律中のRAオーバードライブペーシングは

心室側から不整脈を誘発しやすいか確認するため

先ほどのRVオーバードライブペーシングと同様に

ウェンケバッハ現象が起こるレートを見ていくぞ!

 

オーバードライブのペーシング周期を少しずつ早くしていくと、

オーバードライブペーシング直後から最初のV波までの時間が

徐々に伸びていく(ウェンケバッハ現象が起こる)タイミングがある。

 

もし、主訴の不整脈が180ppmmだったとして

160ppmでウェンケバッハ現象が起きたら

心房からの電気刺激で不整脈を誘発するのは困難だろう!

逆に、主訴の不整脈が180ppmだったとして

190ppmでウェンケバッハ現象が起きたら

心房からの電気刺激で不整脈を誘発することは十分に可能だ!

 

⑤頻拍の誘発

AVNRTの症例では、多くの場合

エキストラペーシングでジャンプアップ現象を確認する最中に

頻拍が誘発できてしまい、そのまま次のEPSを始めてしまう。

 

しかし、もし通常のエキストラペーシングだけでは頻拍が誘発出来なかった場合

ISP(イソプロ)という薬剤を用いて頻拍を誘発しやすくするぞ!

 

頻拍の誘発では、

エキストラペーシングもしくはオーバードライブペーシングを用いて

誘発していくことになる。

その際の誘発レートは

ジャンプアップ現象が起こったときのレートを参考に決めていくぞ!

 

頻拍中の心内心電図波形の確認

頻拍を誘発したら

誘発した不整脈がcommon AVNRTであるか判断するために

最初に心内心電図波形の変化をチェックするんだ!

 

誘発した不整脈が

スローパスウェイを順行しファーストパスウェイを逆行する

common AVNRTの発作である場合

A波がHis波の後ろに観測され、さらにA波とV波の間隔が狭くなるぞ!

(*リエントリー方向が逆のuncommon AVNRTで

このような変化が見られません。注意が必要です。)

image

主訴の不整脈がcommon AVNRTの場合

この心内電位波形の変化を見ただけで

ほぼ確定診断が出せるくらい重要な変化だ!

 

非常に重要だから絶対に見落とすなよ!

 

頻拍中のPVCスキャン

心内心電図波形の変化をサクッと確認したら

誘発した頻拍がAVNRTであることを確認するため

PVCスキャンを行ってリセット現象を見ていくぞ!

AVNRTでは室房伝導が房室結節を介して伝わる。

したがってPVCスキャンではリセット現象が起こらないぞ!

(*もしリセット現象が起こったらケント束が存在する証拠となるためAVRTの疑いが出る)

⇒心カテ用語辞典:PVCスキャン(別名:Vスキャン)とは

 

リセット現象が起こらない場合

PVCスキャンをしても頻拍周期に変化がない。

下の挿絵で説明すると

PVCスキャンを入れた周期と入れていない周期では

頻拍周期が550msと変化していない。

この場合、リセット現象が起こっていないと言えるんだ。

image

ちなみに、もしリセット現象が起こると

PVCスキャンを入れた周期が550ms以下に短縮されるぞ!

 

頻拍中のRVオーバードライブペーシング

頻拍中のRVオーバードライブペーシングでは

ケント束がないことを確認するために

CSカテ上でオーバードライブ直後のVAシーケンスを見ていくぞ!

 

AVNRTの発作時はimage

リエントリー回路がケント束を介していないため

CSカテ上でオーバードライブ直後のVAシーケンスが

A波⇒A波⇒V波」の順になるんだ。

ちなみに、A⇒A⇒Vのうち

最初のA波がオーバードライブの室房伝導からきた逆行性A波で

2個目のA波はリエントリー回路を回っている電位からきた逆行性A波なので

同じA波でも全く性質が違う電位だぞ!

 

また、もしケント束があった場合

CSカテ上でのオーバードライブ直後のVAシーケンスは

A波⇒V波」の順になる。

これは、RVオーバードライブの刺激が

ケント束を介して室房伝導した後、

房室結節を通って直接心室に帰ってくるからなんだ!

 

まとめ

以上がAVNRTのEPS(電気生理学的検査)の一連の流れだ。

病院や執刀医によってペーシングの順番が違うが

着目点は全く同じだ!

 

このレベルの知識は電気生理専門医級の医師しか知らない

超メガトン級にヘビーな内容だ。

 

しかし、カテ室でアブレーションに関わる以上

わからないなんて言わせないぞ!

患者さんのためにもしっかりと理解して手技の流れについていくんだ!

 

 

AVNRTのESP(電気生理学的検査)を覚えるエクササイズを始めるぞ!

 

エクササイズ① 空欄を埋めて文章を完成させるんだ!

早速、心カテ隊員専用ページから、

『AVNRTのEPS(電気生理学的検査)を覚えるエクササイズシート』をダウンロードし印刷しよう。

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imageエクササイズシートの3~5ページに、

AVNRTのEPSについて

簡潔にまとめた文章と表が用意してある。

 

穴埋め形式になっているので

空欄を埋めてEPSの要点を理解するんだ!

 

EPSの手順や着眼点は

特になれないうちは複雑で難しく感じるかもしれない。

しかし、1つずつ要点をおさえていけば必ず理解できるようになるぞ!

 

このレベルの内容を理解できれば

間違いなくエース級スタッフとして活躍できるぞ!

エクササイズシートを使って何度も何度も反復練習するんだ!