さあ、今日もエクササイズの時間だ。
今日のエクササイズは心室期外収縮(PVC)のカテーテルアブレーションだぞ!
心室期外収縮とは、心室で突発的に起こる期外収縮のことだ。
多くの心室期外収縮は治療対象外で経過観察となるが、頻発性の心室期外収縮で患者さんの自覚症状が強い場合や、3連発以上するショートラン型、多形性(=多源性)などの一部の危険な心室期外収縮に対してはカテーテルアブレーションが施行されることがあるぞ。
エクササイズを通して、心室期外収縮をアブレーションでどのように治療していくのか?その流れをしっかりマスターしていこう!
これがエクササイズの全貌だ!↓
心室期外収縮のアブレーションの流れ
①12誘導心電図から期外収縮の起源を推定
②カテーテルを留置
③カテーテル情報から期外収縮の起源を特定
④起源を焼灼
⑤エンドポイントの確認
心室期外収縮(PVC)のアブレーションを1つずつ整理していくぞ!
①12誘導心電図から期外収縮の起源を推定する
心室期外収縮の起源は患者さんによって様々だ。
右室流出路(RVOT)、左室流出路(LVOT)、後壁、大動脈弁直下や冠尖などなど起源に応じて多くの種類の心室期外収縮が存在する。
起源の場所によって12誘導心電図の波形が異なるため、12誘導心電図から何起源の心室期外収縮なのか、ある程度推測することが出来るぞ!
術前に起源を推定することで、手技がスムーズになり手技時間を短縮することが出来る。
また、右室起源のものと左室起源のものとで使用するカテーテルの種類が若干異るため術前に右室起源なのか、左室起源なのか大まかに推測してどのカテーテルを使って治療を開始すれば良いか判断することができるんだ。
手技時間短縮、及び使用するカテーテルの種類を決めるという意味で12誘導心電図から起源を推定することは大切だぞ!
②カテーテルを留置する
心室期外収縮のアブレーションでは、右室起源の場合と左室起源の場合とで使用するカテーテルの種類が若干異なる。
それぞれの場合でどういったカテーテルを使っていくのか整理していこう。
右室起源心室期外収縮の種類と使用するカテーテル
■右室起源心室期外収縮の種類
・右室流出路(RVOT)起源心室期外収縮
・肺動脈起源心室期外収縮 など
■使用するカテーテル例
・Hisカテーテル
・RVカテーテル
・アブレーションカテーテル
■カテーテル配置例
■各カテーテルの役割
Hisカテーテル:
房室結節近傍を焼灼する際に、房室ブロックにならないようHis波をモニターするため使用する
RVカテーテル:
期外収縮の起源を推定するために使用する。
アブレーションカテーテル:
・期外収縮の起源を特定するために使用する。
(RVカテーテルでおおよその起源の場所を把握し、アブレーションカテーテルで起源をピンポイントで特定する。)
・起源を焼灼する
左室起源心室期外収縮の種類と使用するカテーテル
■左室起源心室期外収縮の種類
・左室流出路(LVOT)起源心室期外収縮
・大動脈弁直下起源心室期外収縮
・左室後壁(乳頭筋)起源心室期外収縮
・冠尖起源心室期外収縮 などなど
■使用するカテーテル例
・アブレーションカテーテル
■カテーテル配置例
■アブレーションカテーテルの役割
期外収縮の起源を特定し焼灼するために使用する
③カテーテル情報から期外収縮の起源を特定
カテーテルを留置したら、期外収縮の起源を特定してくぞ!
カテーテルを使った起源の特定方法には大きくわけて2パターンある
・ペースマップ
・アクティベーションマップ
以上の2つだ。
ペースマップとは、期外収縮の起源を特定する為に行うアブカテペーシングのことだ。
具体的には、洞調律中に期外収縮の起源と思われる場所にアブカテ先端をピンポイントで留置しアブカテペーシングを行っていく。
ペースマップで得られた波形と、ターゲットとなっている期外収縮波形とを見比べて両者が酷似していれば、アブカテ先端が期外収縮の起源上にある可能性が高いと言えるんだ。
心室期外収縮のアブレーションでは、このようなペースマップが合う場所を探していくぞ!
*起源の場所によってはペースマップが合いにくい、もしくは合ったとしても本当の起源ではない場合があります。(例えば中隔起源など)そのため、ペースマップの信憑性は100%ではないので盲信しないでください。
アクティベーションマップとは、三次元マッピング装置(カルトやベロシティー)で作成できる三次元マッピングのことで、
期外収縮時に作成することで期外収縮の起源を赤く表示することが出来るぞ!
アクティベーションマップを作成するには、複数回の期外収縮を捉えマップを完成させる必要がある。
そのため、期外収縮が高頻度で出る症例でしか行えない点に注意するんだ。
RVカテーテルやアブレーションカテーテルを使ってアクティベーションマップを作成することで起源を特定することができるぞ!
④起源を焼灼する
ペースマップ及びアクティベーションマップで起源を特定したら、最後にアブレーションカテーテルの電位を確認し、本当にそこが起源なのかどうか確認していくぞ!
心室期外収縮の至適通電部位にアブレーションカテーテル先端を持っていくと期外収縮時にアブレーションカテーテル先端(ABL1-2)の電位が12誘導のQRS波に先行し、さらにアブレーションカテーテルのユニポーラー電位(ABL-Uni)がQSパターンになる。
「ABL1-2の電位が12誘導のQRS波に先行+ABL-UniがQSパターン」
この波形パターンは期外収縮の至適通電部位を意味しており、アブレーションカテーテル先端が期外収縮の起源と接していることを意味している。
心室期外収縮のアブレーションでは、ペースマップもしくはアクティベーションマップで起源を特定し、さらにアブレーションカテーテル先端でこの波形パターンが確認できた場所を重点的に焼灼していくぞ!
⑤エンドポイントの確認
心室期外収縮のアブレーションのエンドポイントではあらゆる手段を使って期外収縮の誘発を試み、それでもなお期外収縮が出ないことを確認していくぞ!
つまり、あの手この手を使っても期外収縮が出なければアブレーション成功と判断し手技が終了する。
具体的には、オーバードライブペーシングやエキストラペーシングで心筋を刺激したり、ISP(通称:イソプロ)やエンドフォニウムといった薬剤で誘発してみたり、30分ほどウェイティングしたりといろいろな手段で誘発を試みるぞ!
*ISPは昼間の労作時、運動や興奮で出現するタイプの心室期外収縮の誘発に有効です。
*エンドロフォニウムは夜間安静時に発生する流出路起源心室期外収縮の誘発に有効です。
まとめ
心室期外収縮のカテーテルアブレーションは起源によってカテーテルの位置が変わるため操作室から見ていても何をやっているかついていけなくなることがある。
しかし手技の基本的な流れを押さえてしまえば、手技の流れにきっとついていけるはずだ。
エクササイズを何度も復習して心室期外収縮のアブレーションをマスターしていこう!