心臓カテーテル検査のエクササイズ

冠動脈造影(CAG)でのLADとLCXの見分け方

心カテ隊員諸君、エクササイズの調子はどうだろうか?

今日はエクサイズを少し休憩して心カテ隊員から寄せられた相談に答えようと思う。

 

 

先日、心カテ隊員の一人から隊長宛に相談があった。

相談内容の原文はこちらだ↓

題名:冠動脈LADの中隔枝と対角枝を区別しずらい

本文:

左冠動脈造影時のLADとLCXを区別するには管球の位置を確認しながら慣れるしかないのでしょうか?

また、LADの中隔枝・対角枝を見分ける方法や特徴はないのでしょうか?

 

相談内容は

①LADとLCXの見分け方

②中隔枝と対角枝の見分け方

この2点についてだが、

その中でも①LADとLCXの見分け方について

このコラムで詳しく答えたいと思う。

 

確かに冠動脈造影(CAG)で左冠動脈を造影したときに、

経験豊富なカテ室スタッフは瞬時にLADとLCXを見分けるが、

慣れていない人の場合、LADとLCXの見分けがなかなかつかない。

 

経験豊富な先輩たちにLADとLCXの見分け方を質問しても

『透視画像をたくさん見て慣れるしかない』

とはぐらかされることも多いだろう。

 

今日のコラムでは、そんな経験豊富な先輩たちが

どうやってLADとLCXを見分けているか?

その秘密を公開しよう。

 

LADとLCXを瞬時に見分ける2ステップ

一見難しそうな左冠動脈造影でのLADとLCXの判別だが、

実はたった2ステップで瞬時に見分けることが出来る。

 

ステップ①:心臓の向きからRAOビューとLAOビューを見分ける。

ステップ②:LADと思われる枝の中隔枝を確認する。

 

以上の2ステップだ。

この2ステップを整理していこう。

 

ステップ①:心臓の向きからRAOビューとLAOビューを見分ける。

経験豊富なカテ室スタッフは透視画像を見ただけで

RAOから撮られた画像なのか

LAOから撮られた画像なのかを瞬時に判断する。

 

彼らがRAO・LAOを判断しているポイントは

ずばり『透視画像上の心臓の向き』だ。

 

LAD, LCX見分け方RAO

心臓をRAOビューから撮影すると

心臓の向きが横向きに映る。

つまり、心臓の向きが横向きなら

RAOから撮影された画像だと言えるんだ。

そして、左冠動脈をRAOから撮影すると

LADが右側、LCXが左側に見えるので

これらの情報からLADとLCXの区別が可能だ。

心臓の向きが分かりにくいときは、

左冠動脈の根元から先端に向かって一本線を引くと分かりやすい。

引いた線が右向きの伸びればRAOだ。

 

 

LAD, LCX見分け方LAO

次に、LAOビューから心臓を撮影すると

心臓が縦向きに映る。

つまり、心臓の向きが縦向きなら

LAOから撮影された画像だと言えるんだ。

そして、左冠動脈をLAOから撮影すると

LADが左側、LCXが右側に見えるので

これらの情報からLADとLCXの区別が可能だ。

心臓の向きが分かりにくいときは、

左冠動脈の根元から先端に向かって一本線を引くと分かりやすい。

引いた線が下向きの伸びればLAOだ。

 

ステップ②:LADと思われる枝の中隔枝を確認する。

心臓の向きからLADとLCXを判断しようとしても、

場合のよっては心臓の向きが横向きか縦向きか判断が難しい場合がある。

そんなときは、LADから伸びている中隔枝を確認することで

より正確にLADとLCXを判断できるぞ

 

LAD LCX 見分け方 中隔枝LADからは、ヒゲの様な細い中隔枝が何本も伸びている。

そのため、心臓の向きから判断したLADと思われる枝から

ヒゲの様な中隔枝が確認できたら

LADでまず間違いない。

 

ただ、患者さんによっては中隔枝が見えにくい患者さんもいるため、

そこらへんは臨機応変に対応しよう。

 

一般に中隔枝はLADの左側に見えることが多いぞ!

(*LAOビューでは右側に見えることもあるので注意)

 

 

心臓の向きが上手く見えない人がLADとLCXと見分ける裏技

LADとLCXを見分けるとき、

最初に心臓の向きからRAOビュー・LAOビューを判断するが、

透視画像に慣れない人は

透視画像から心臓の向きを判断することすら難しいだろう。

 

そんな人でもLAD・LCXを見分けれる、

とっておきの裏技を紹介しよう。

 

その裏技とは、ずばり

LADもしくは、LCXと思われる太い枝のうち、

枝の左側にヒゲの様な枝(中隔枝)が

何本も伸びている方がLADである

という裏技だ。

 

透視画像に慣れていないから心臓の向きなんて分からない。

だったらいっそ心臓の向きを無視して

中隔枝だけでLADを区別してやろうという

荒っぽい裏技だ。

 

だが、この裏技は初心者には特にオススメだ。

LAOビューでは中隔枝が、右側に見えることがある点

そして、患者さんによっては中隔枝が見えにくい人がいる点

この2つの欠点を除けば、これだけで十分LADとLCXを見分けることが出来る。

 

そして何よりも、

自分の分かる範囲で精一杯手技の状況を把握しようとする

その姿勢がすばらしいぞ。

 

対角枝と中隔枝の見分け方

最後に、相談にあった対角枝と中隔枝の見分け方だが、

心臓の表面を走行している枝が対角枝で、

心臓の内側に向かって伸びている枝が中隔枝だ。

 

心臓の向きや形を把握した上で

枝がどのように走行しているかで区別できるぞ。

 

しかし、この判断も透視画像に慣れていない人にとっては

難しい判断になる。

 

透視画像に慣れていないうちは

LADの右側が対角枝

LADの左側が中隔枝

と覚えておこう。

 

ただし、この見分け方はLAOビューからの画像では

必ずしも当てはまらない。

100%万能ではないから、そこらへんは注意するんだ。