心カテ用語辞典

ラディアル・アプローチ(radial approach)を覚えるエクササイズだ!

さあ、今日もエクササイズの時間だ!
今日のエクササイズはラディアル・アプローチだぞ!

ラディアル・アプローチという用語は、カテーテルの穿刺部位を決めたり、指示したりするときに頻繁に使用される。
カテ室で仕事する上で必ず知っておかなければいけない最重要ワードの1つだ。

ラディアル・アプローチとはどのようなものなのか、エクササイズを通して完璧にマスターしていこう!

 

これがラディアル・アプローチの全容だ!

用語の意味

ラディアル・アプローチ=橈骨動脈穿刺

ラディアル・アプローチが採用される主な手技

  • CAG
  • PCI

メリット・デメリット

■メリット

-TRバンドを使用すれば止血が容易
-他のどの穿刺部位より術後の安静制限が軽度であるため苦痛が少ない

■デメリット

-スパズム(=血管の攣縮)を起こしやすい
-血管が細いため穿刺困難な場合がある

術前準備・看護のポイント

  •  橈骨動脈の触知の確認
  • アレンテストの実施(穿刺部を決めるにあたり医師が行う場合が多い)
  • 穿刺部の確認と点滴の留置

術後管理・看護のポイント

  • 穿刺部の安静
  • 穿刺部の観察
  • 末梢循環の観察
  • (TRバンド使用の場合)プロトコールに基づいた抜気管理

 

ラディアル・アプローチについて整理していくぞ!

ラディアル・アプローチとは、橈骨動脈穿刺のことで、CAGやPCIでしばしば採用されるアプローチ部位だ。

以下、ラディアル・アプローチのメリットとデメリット、そして術前・術後の看護のポイントについて1つずつ理解していこう!

ラディアル・アプローチのメリット

メリットとして、止血デバイスであるTRバンドを使用することで止血を容易に行えることが挙げられる。。

また、手首を曲げないことで穿刺部の安静が保てるため、フェモラル・アプローチ(鼠径穿刺)のように術後長時間の臥床を強いられることがなく、患者さんにとって苦痛が少ない。他の穿刺部位に比べ術後の安静が楽だ。

ラディアル・アプローチのデメリット

デメリットとして、スパズムが起こりやすいことや橈骨動脈は血管が細いため穿刺困難な場合があることが挙げられる。
スパズムは痛み刺激や極度の緊張で誘発されやすい。そのため、手技中はできる限り患者の痛みの軽減や緊張の緩和に配慮しよう。

また橈骨動脈は細い血管であり、場合によっては穿刺困難なことがある点もデメリットといえるだろう。
通常であれば穿刺時に手首をしっかり伸展させて固定することで容易に穿刺できる。
ところが、症例によっては、血管が細すぎて穿刺ができなかったり、スパズムで血管が閉塞してしまいディバイスが上がらない時がある。
その時は速やかに穿刺部を変更し、別の部位からアプローチしなければならない。

術前準備・看護のポイント

ラディアル・アプローチを行う症例では、術前準備として下記の3つの処置を行うぞ!

  • 橈骨動脈の触知の確認
  • アレンテストの実施(穿刺部を決めるにあたり医師が行う場合が多い)
  • 穿刺部確認と点滴の留置

これらの処置は、手技を安全かつスムーズに進めるために重要だ。

橈骨動脈の触知の確認は、術後、末梢循環を評価できるようにするために必要だ。

アレンテストは橈骨動脈にシースを留置した際、万が一動脈が狭窄・閉塞してしまっても尺側動脈側から末梢(手のひら全体)へ血液循環が得られる事を確認するために行う。

 

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参考:アレンテストの実施手順

 ①手首の橈骨動脈と尺骨動脈を指で圧迫。血流を遮断した後、患者さんにグー・パー・グー・パーを10回ほど行ってもらう

 ②手のひらが白くなったら(虚血になったら)尺骨側のみ圧迫を解除。

 橈骨動脈のみ圧迫した状態で10秒以内に手のひらに赤みが戻ってきたら、アレンテスト陽性。

 これにより尺骨動脈の血流が親指側(橈骨等脈側)にも流れることが確認できる。

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点滴は、原則、穿刺側の反対側上肢に留置する。しかし、透析シャントがあるなどやむを得ず同側に留置する場合は、手首や肘関節周囲を避け、清潔野の邪魔にならない部位に留置していこう。

 

術後管理・看護のポイント

術後管理・看護には「穿刺部の安静」「穿刺部の観察」「末梢循環の観察」の3つのポイントがあるぞ!
もし、止血デバイスであるTRバンドを使用する場合は、上記3ポイントに加え「プロトコールに基づいた抜気管理」も加わる。

一つずつ順に確認していこう。

穿刺部の安静について

ラディアル・アプローチを行う場合、まずはじめに患者に穿刺部の安静の重要性を説明する必要がある。これにより、患者に術後穿刺部の安静・可動制限(穿刺部の手首を曲げない)について理解してもらい、協力を得ことができるんだ。

安静について理解されていても利き手が穿刺側の場合、ついつい使ってしまうこともあるので注意が必要だ。

手首の安静時間内に食事がある場合は、反利き手でも食べやすい固形食(おにぎり、卵焼きなど固まっている副菜)を提供していくと良いだろう。

穿刺部の観察について

心カテやPCIをする患者さんは抗血液凝固剤を飲んでいる人が多く、カテ中もヘパリン化するので術後の出血トラブルを起こしやすい。
そのため、術後は穿刺部を観察して出血トラブルの有無を確認していく必要があるぞ!

観察のポイントは「出血の有無」と「腫脹の有無」「疼痛の有無」の3点だ。

■出血の有無について

止血が不十分であったり、安静が守れず穿刺部を屈曲させてしまったりすると再出血することがある。
しっかり止血が得られているか、出血の有無を観察していこう。

■腫脹の有無について

腫脹の原因の多くは「血腫形成」によるものだ。橈骨動脈は表在性血管であるため出血性合併症は少ない。
腫脹や血腫を見つけたら、それらが増大しないかマーキングをして経過観察していこう。

穿刺部にて内出血が起こった場合、血腫ができ、腫脹する。
もし腫脹や血腫の増大がある場合、内出血が持続している可能性がある。
その場合は止血が得られるまでひたすら圧迫を続ける必要がある。

もし腫脹や血腫の増大がなければ、止血が得られているサインだ。
血腫が吸収されるまで保存的に経過を観察していこう。

血腫が吸収されるスピードは、出血の量や、患者さんの代謝が関わるため一概には言えないが、長期入院の人を除いて、退院後に軽快する患者さんが多い。

■疼痛の有無について

腫脹で腫れていたり、穿刺部に何らかのトラブルがあると疼痛を伴うことがある。
そのため、疼痛の有無もあわせて観察していこう。

末梢循環の観察について

ラディアル・アプローチを行うと、末梢動脈塞栓が起こったり、術後、穿刺部の過圧迫や圧迫のずれなどにより末梢循環が悪くなる可能性がある。
そのため、末梢循環が正常であるかどうかを確認するため、「橈骨動脈の触知(左右差・減弱の有無)」「手の色調・冷感」「手のうっ血」「しびれの有無」の4つの項目を観察していくぞ!
末梢循環不全の兆候を認めたら医師に報告し、適切に対処しよう。

(TRバンド使用時の)プロトコールに基づいた抜気管理について

TRバンドを使用して止血する場合はプロトコールに沿って徐々に抜気し、管理していく。抜気は医師または看護師が行う。抜気する過程で出血することもあるため注意深く観察が必要だ。

また、TRバンドを用いて止血している場合、手首の圧迫によって時間の経過とともにしびれが出てくる場合も多い。加圧迫になっていないか確認し、苦痛が強い場合は医師に報告し適切に対処していこう。

以上がラディアル・アプローチの基本だ。
ラディアル・アプローチは心カテでは非常によく見聞きする最重要用語の1つだ。

用語を聞いただけで意味とメリット・デメリット、(もし看護師であれば看護のポイント)が瞬時にイメージできるよう、何度もエクササイズを復習し、完璧に理解しておこう!